私が藤江小学校に通っていた頃です。浜国に面した藤江小学校正門から細い道を西へ少し行った辺りに牛舎がありました。下校時などに「くさい、くさい」といいながら、今では名前もおぼろげになってしまった友人らと一緒に、何度か観に行ったものです。
まあ、それほど臭くもないものを囃し立てて喜んでいたのが、いかにも小学生らしかったといえるかもしれませんね。
それから25年以上が経ちました。藤江小学校あたりへ行くことはほとんどなく、あったとしてもコミセン前を通って海岸へ出るくらい。そして、自分の小学生時代を懐かしく思い出すことも……。
それがつい最近、なんの気なしに歩いていて気づいたのです。まだ、あの牛舎が健在であることを。実際のところ、ちょっとびっくりしました。小学生時代の思い出を、ふいに目の前に差し出されたんですから。もっとも、さほど「甘酸っぱい」といえるほどの思い出ではありませんが。
それから写真を撮るために出直して、じっくり観ることにしました。建物はかなり古びていたので、おそらく私が小学生のころと同じだと思います。匂いですが、手入れが行き届いているようで、ほんの僅かしただけでした。入り口付近には、「乳用牛群検定農家」という大きなシールが貼っており、牛を飼っている目的も解りました。入り口近くへ近づいてみると、薄暗くてはっきり見えなかったのですが、おそらく10頭ぐらいでしょう。それで生計が成り立つのか成り立たないのか、それとも趣味のようなものなのか。私を含めて大抵の人はそう思うでしょうが、まあ野暮な詮索は止めておきましょう。それよりも、まだ牛舎が健在だったことの驚きと喜びの方が大きかったともいえます。
規模は解りませんが、大久保の方でも酪農をやっているところがあるそうです。都市化が進み田畑が次々と新興住宅街に変わりつつ現代の明石で、細々とであるが酪農をつづけていらっしゃるのを観て、何か応援したい気持ちになりました。これからもぜひ頑張って欲しいものです。